帰路

好きなこと、気になることを書き連ねてみれば、と彼女は言う。

確かにそれがいいかもしれないと思った。

今日は非常に天気が良くない。

それでも気温は充分な暖かさ。

冬は完全に通り過ぎて行ったし、半年以上戻ってくることはないだろう。

今日は午後から一件の来客があるかもしれない。

私としてはそれを待ち望んでいるが、どうなるかはわからない。

そして、昼前までに私にはやるべきことがある。

自分のために、そして彼女のために。

より多くの人のためであるのかもしれないが、そこに触れ得る必要はない。

どんな行為であれ決断であれ、関わりはある。

自分が持っている以上に他人は自分のことを気にしている。

それも正しいだろう。

そして、それと同じくらいに自分のことなんか気にしていない。

そして、同じように、他人のことを理解するということは可能なような不可能なような曖昧なことだ。

自分のこともしっかりと把握できていないように。

外はとても明るい。

雨が降っているのか病んでいるのか、よく目を凝らさないとわからないくらいの明るさだ。

雲が街を覆っているというのに、まぶしいほど明るい。

いつまでも天気は良くなりようにない。

朝に比べて風も強くなってきたので、今日中に桜の花は全て散ってしまうかもしれない。

誰にもそれを止めることができない。

先日見た、日本で一番とも言われる桜。

初めてそれを見た時、私は圧倒された。

緑と白のコントラスト。

規模の大きさから目の前の空間をうまく認識することができなかった。

どこからどこまでを一つの景色として区別すればいいか、意識的に考えなければならなかったし、考えてもそれを行うことはできなかった。

とてもとても美しく、大きい光景だったので、心に大きく焼きついた。

それから何年経ったのだろうか。

今年は全く感動を覚えなくなっていた。

異なるところに感動を見出している自分がいたことを強く感じる。

間違いなく、最初見た時と何かが異なった。

 

これからある人が、世界に向けて旅立っていく。

二、三年は帰らないという。

ずっとそれをやりたがっていたよね、と誰かが言っていた。

確かに、本人も他人も、誰もそれを止めることはできなかったようだ。

その道がとても自然に、自分には映る。

何か凄いことをしているわけではないし、罪を犯しているわけではない。

難しいことにチャレンジしているようにも感じない。

ただ、その人にとっては進むべき道に至っただけのような気がする。

もちろんそれは良きことであると思う。

 

それで、あなたの好きなことは。

と、彼女が言った。

 

2017.4.7

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